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本を出せるようになるまでの掃き溜めに。文章を書くことが減ってしまったので練習も兼ねて。
ここで吐き出したことで満足してしまわないよう気を付けよう。








はこの中に土を敷き、草花を植える。
生き物を放ち、うつくしい装飾を散りばめる。
気に入った姿にならなければ、ひっくり返してもういちどはじめから。
なんどもなんども、理想の庭ができるまで。
土も花も獣も、時間さえも。

繰り返すうち厳選されていくお気に入りたちは、何度も庭に降り立った。
つくりあげた庭で居場所を定められ、けれどこちらの気持ちひとつで世界を失うのだ。


「そろそろ今回も潮時だなぁ」

呟くと、そばに座っていた孔明が首を傾げる。

夕暮頃からはじまった酒宴は、夜半を過ぎてもいまだ落ち着く様子を見せない。誰かにすすめられ断りきれなかったのか、孔明はめずらしく頬を染めて盃を手にしていた。

「もうお開きですか、との?」
「うん?どうするかなぁ」

普段以上にぼんやりした声音。とろんと零れそうな瞳が見上げてくるのが愉快で気分がよくなった。

この瞳がもうすぐ絶望に塗りつぶされることを知っている。
零れる涙を拭うこともできず立ち尽くしたのを、戯れに奪ったのは何度目の庭だったろうか。

はこが大きくなるほど、ひっくり返すのは難しくなる。
過ごした時間が長くなるほど、やり直すための手順が増える。

それでもやめることはできなかった。
理想のかたちにならないのであれば、生きている意味はない。
これまで作り上げ壊してきた庭にも、そのために費やしたすべてにも意味がなくなるのだ。

「もう少しだと思うんだよ」
「?」

孔明の向こうに座る男を見る。
趙雲となにごとか話し込んでいるようで、こちらの視線に気が付くことは無い。
庭に並べるつもりなどなかった男。はこの外側に落ちていたきれいな石。
何度目かにひっくり返した拍子に、お気に入りに混ざってしまった。

「もう少し。そう、あとはやり方次第だ」

もう少し、あと少しを繰り返し、ここは何千回目の失われる世界だろうか。

男に声をかけられた孔明がそちらを振り返る。
幸せそうなその笑顔。まもなく壊れるその光景に、俺はますます愉快になって大声で笑った。
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